心停止状態は電気ショックしか解消できない

AEDが必要とされるのは、「心室細動」や「心室頻拍」という、心臓が小刻みに振動してしまって、全身に血液を送り出すポンプの動きを果たさなくなってしまった状態です。この状態を心停止状態といいます。心停止状態におちいる理由は様々ありますが、一旦この状況になってしまうと通常自然に回復することはありません。この状況を打開できるのは電気ショックだけだと言われています。AEDは、こういった心停止状態を解消できる電気ショックを発生させられる機器です。

 

1分遅れるごとに救命率が10%程下がる

心停止状態では血液が体を循環しなくなってしまっているので、酸素や栄養分が体に届きません。仮に今息を止めると、1分もしないうちに苦しくなると思いますが、体は酸素を常に必要としていて、これが届かなくなるとすぐにダメージをうけます。

心停止状態になってから一分経過するごとに救命率は7%から10%低下すると言われていますので、10分経過してしまうと、ほぼ助からない事になります。心停止が起こったときには、1分1秒も早い救命が望まれます。

 

救急車を待っていたのでは遅い

上に書いたとおり、心停止状態に陥った場合、除細動(電気ショックで心臓の痙攣状態を除去して通常の心拍に戻す事)が1分遅れる毎に救命率が10%程下がると言われています。救命に1分1秒を争う状況ですが、頼りの救急車はどの程度で到着するのでしょうか。

総務省のデータで、平成26 年中の救急自動車による現場到着所要時間は、全国平均で 8.6 分というデータがあります。(https://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h27/12/271222_houdou_2.pdf参照)

これは平均時間なので場所によってはもっと短い可能性はありますが、傷病者を発見して119番通報し、救急隊が出動する間にも数分たちます。また到着してから傷病者を確認し、除細動に移るにも時間がかかります。救急隊が処置をする頃には10分以上経過してしまう可能性は非常に高いといえます。

このことを考えると、心停止に陥った傷病者を救うためには、早急にAEDが使用される必要があることがわかります。

 

心停止でなくなる方は交通事故の十数倍

では、心停止でなくなる人はどの程度いるのでしょうか。

消防庁によると平成25年度に心原性(心臓に原因があるもの)の心肺機能停止症例数は7万5,397件とされている。このうち、心肺機能停止の時点を一般市民により目撃された件数は2万5,469件と報告されています。一方で、同じ年の交通事故での死亡者数は4,373人です。全体で計算すると交通事故の約17倍、一般市民に目撃された件数で計算すると約6倍の方が心停止でなくなっている事になります。

また、目撃した一般市民によりAEDが使用された件数は907件となっており、約3.5%の割合である。ともあります。AEDが使用される件数が増えれば救命事例が増える事が予測され、AEDの普及と、イザという時にAEDを使える人材が増える事が望まれます。

 

高齢者だけじゃない

心停止状態に陥るのは、高齢者に多い傾向がありますが、子供や若者も心停止に縁が無いわけではありません。サッカー選手の松田直樹選手が練習中に倒れて亡くなった事例がありますし、埼玉県で当時11歳だった運動が得意だった明日香さんが亡くなった事例もあります。小さなお子さんの場合は、まだ体が十分に出来上がっていないところがあるので、ボールが胸に当たったときなどに心臓震盪(胸部に衝撃が加わったことにより心臓が停止してしまう状態)になってしまう事例も多く報告されています